「あきらめないでお母ちゃん」 を読んで

吉岡たすく先生の本を読みました。

大阪の小学校の先生で、教育研究者です。ご本人は、教育評論家と言われることを嫌っていたようです。「子供に教わることばかりなので批評できることはない。児童文化研究家にしてほしい」と言われていたそうです。


「子供が考えていることを、大人の価値観で束縛しないように」について
大人の世界とは矛盾するかもしれませんが、「結果」だけを求める社会の価値観を押し付けず、子供の時は、「過程」を大事にする少年少女に育っていってほしいと私は思います。損得の世界で生きなければならない大人は、勘定ができないといけません。中にはそうでない人の為に生きる立派な方もおられますが、なかなか普通の意思ではそうはなれません。子供は様々な個性やタイプを持っています。引っ込み思案なタイプ、リーダーシップを発揮するタイプ、考えてから行動するタイプ。先頭に立てるタイプ、器用なタイプ。大人が考えた損得勘定の物差しを押し付けて、他と比較して劣っているから治せ、というのは違うといいます。大人の価値観や自分の考え方を子供に強要するのはおかしいのかもしれません。人より劣る面を認めてあげる勇気、それを自分が親の立場になったときに持てるか不安です。


「思いやりを持った、自発的に考えたり行動できる子供を育てること」について。
子供の感性の鋭さ、豊かさには、私も甥や姪、友人の子供などと接して驚かされます。「後で遊ぼう」と何気なく言ったことを、ずっと覚えていたりします。自分の子供時代を思い出したりもします。天井の隅が怖かったり、雲の空の向こうを空想したり。あの頃、触れるもの見るものが新しいものばかりだったんだろうと、懐かしくなります。実際に子育てをしているお母さん達にはかないませんので、内容だけちょっと紹介します。思い当たることがあれば、ぜひ図書館で借りて読んでみてください。


親は、子供の限界を知ってあげること。一人でできることは手出ししない。その上で劣等感を持たせない様に、こっそり手助けしてあげること。それが親の思いやり。低学年のときはテストは点数よりも、やる気を出したことをほめてやること。他人と比較して、ただのテストの点が悪いからといって親が一喜一憂しないこと。自発力を養うこと。口で言うのではなく、お母さんが一生懸命なところをみせてあげること。何でもすぐ答えを教えないこと。聞かれたら初めて教える。でも正解は言わなくてもいい。子供は勝手に見つけるから。お母さんは明るくイキイキなこと。元気に笑顔でいってらっしゃい、おかえりなさい、と言ってあげること。お母さんが、完璧過ぎると子供はしんどい。お母さんは明るく元気でちょっとボケてて一所懸命がいい。まわりから「親子で明るくて元気やね」と言われる様な親子になってほしいと思います。


最後に。
吉岡先生自身も教師でいる間、ずっと失敗や悩みを繰り返して、考えてきました。こうした一番子供と接する教師ですら、悩んで見えない正解に向かって、教育を考えてこられました。同じく子供と接する世間のお母さんも、同じように苦労されているのだと思います。正解なんてないのだと思います。ただ子供のことを思いやれる大人になりたいです。小さな完成より大きな未完成であれ。完成した人間などいないと思います。