「選挙のパラドクス」 を読んで


日本は民主主義の国なので、公平な選挙で選ばれた国民の代表が、政治を司ってきていると思っていました。実際に、一人一票を投じることができる権利を有し、それが最良な方法(と、社会が成熟していると最近まで思っていた為)そう思っていました。実際は、本当に日本は民主国家なのだろうかという疑問が日々湧いています。あほな民はあほなりに、疑問を一つずつ解決していくことが、一庶民である私の意地です。


年末の選挙では、様々な問題がありました。票割れ、一票の格差投票率の低さ、支持団体、支持企業との繋がり。他にもあるかもしれませんがそれくらいしか知りません。そういった問題を解決し、民意が正しく反映される公平な選挙とはどんな選挙なのでしょうか。集団が決定する最も公平なシステムはあるのでしょうか。


難しい本だったので、アメリカやヨーロッパの歴史や政治家について知識を深めてから、また熟読したいところですが、死ぬまでに読みたい心が生まれることを願うばかりです。佐藤優さん読書法でいうと普通の速読で、気になるところだけ重点的に読みました。


著者は、現代の投票制度の不公平さについて論じています。社会の集団が意思決定する場合に、集団の意思を完全に反映した決定は不可能だという、アローの不可能性定理を挙げて、現在の相対多数投票の不完全さを指摘しています。


もっともシンプルで他にないと思っていた今の選挙。一人が一票。誰かに投票。これは是認投票と言われます。投票したい人がいてもいなくても、誰かに入れるかか、もしくは入れないか。0か1でしかない。1の場合、誰かにいれるとする。でも、他に適当な人がいないから入れたりする。もしくは、自分が入れたい人はマイナーで、どうせ当選できないから、自分の票が無駄にならない候補者に入れたりもする。0の場合、誰にも入れない。支持する候補者が一人もいなければ誰にも入れない様にすることができる。ただ、その場合は、仕事やレジャーや、あるいはパチンコを優先して、投票所に行かない人と、投票結果は、同等の扱いになる。伊丹万作氏のように、政治をしない既得権益者の言いなりになる政治家を選ぶ選挙を棄権する、という人も今もいるかもしれない。いい政治かどうかは今回の本題ではないので、我々の一票が有益となるシステムはどんなんだろうか。是認投票だと、AとBの候補者が票割れした時に、ほとんどの人が推薦しないCが当選することがある。


著者が考える最も素晴らしい投票システムは、範囲投票です。範囲投票とはネットでお馴染みの、「いいお店5つ星評価」のようなものです。同一集団が全候補を採点する場合に効果的で、それは選挙です。いいお店評価は特定の人しか入れないので当てはまりません。ABC三人の候補に、それぞれ複数段階で評価する方法です。Aは5点、Bは4点、Cは1点。是認投票の場合は、AとBで票割れが起こるが、範囲投票だと、票割れによりCが選ばれる可能性はない。


現行の日本の選挙システムを範囲投票に変えるのは難しいのでしょうか。マークシート採点にすれば効率よくできそうな気がしますが、法律で決められているのでしょうか。公平性が守られるのであれば、是非この範囲投票の実現性について考えていきたいと思います。票割れについては対策できたとして、一票の格差については選挙区が細かく区分けされている限りは、格差が生じるので、選挙区を拡大するなりという、別問題だということだと考えました。票割れの課題は、政治的難題のひとつであり、数学的論理によって改善しようとする試みがされています。


本題から外れるかもしれませんが、人はその時の快楽でしか物事を判断しません。実際に私は、自分が死んだ以降の時代についてはほとんど何も考えてもいません。よく考えたとして、甥っ子や、友達の子供が大人になる頃くらい、いや、果たして20年も先のことするも私は考えていない。そう考えると20年も先の将来など、一体誰が予測しているのでしょうか。ローン残高は予測できますが。。。選挙システムは極端に言えばシステムの話しなので、民意がダイレクトに伝わる方向にはすぐ変わると思いますが、その民意自体の正しさについては、どう考えていかなければいけないのでしょうか。