「エンジンのABC」を読んで


私たちの生活に欠かせないエンジンの歴史や、4サイクルの噴射・点火の仕組み、燃焼効率の重要性、排出ガスの浄化システムなどの説明をされた本です。1996年に1刷が発刊されてから15年経ちますが、今でも参考になる本だと思います。本を頂いた当時は、固くておもろない本やなーっと思ってほとんど読んでいませんでしたが、今改めて読むと分かり易くて、それでいて詳しく書かれています。エンジンにちょっと興味があるという方、どんな部品で構成されているのか知りたい、という方にはおススメです。特に私たちに身近な自動車のエンジンについて多く書かれていますが、定置型のエンジンや船舶などの大型エンジンとの対比について書かれていたりして、それもまた面白いです。1Lたかが百数十円払えば、重い荷物や人を何キロも遠くへ気軽に運べるのはエンジン君のおかげです。それが50Lも燃料搭載できて数百キロ先までも移動できるのはエンジン君のおかげです。この世の中当たり前ですが良く考えるととてもありがたい。先日初めてアバターを見た私にとっては、便利すぎて贅沢すぎて少し切ない機械です。下山思想ですし。タイタニックの映画に出てくるような船のエンジンは、一度は実物を見てみたいです。


エンジンの技術は戦争によって飛躍的に進歩しました。当時の技術を結集していろんな形のエンジンが開発されました。星型エンジンなどは戦闘機で使われて有名ですが、クランクシャフトを中心にシリンダー側?がぐるぐる回るものもあったとか。自動車用の4サイクルエンジンでは今でマツダが、世界一優秀な燃焼効率を実現したエンジンを世に送り出しています。この開発が過給機と合わせて当時から研究されていたということをこの本で知りました。私はロータリーエンジンに力を入れるマニア向けの開発をする会社なんだと思ってそこが好きでしたが、改めてマツダのエンジンが単純なこだわりで開発しているのではなく、それが一夜にして完成した技術ではないことを知りました。居住空間を狭めても軽量化するという発想に惚れてデミオを買いましたが、いよいよマツダカーファンになりました。でも次マツダを買うかは別です。ハイブリッドにも電気自動車にも乗ってみたい(FT86にも。。。)。逆に車が私の生活に本当に必要かという疑問も有ります。



話しは戻って、この本が書かれた15年前は既に厳しい排ガス規制が採用されていた時代ですが、現在はそれをさらに厳しくした規制が敷かれて、自動車各社はそのハードルをクリアすべく奮闘しています。規制レベルが変わり、時代のニーズが変わり、エンジンに付随するシステムは変われど、エンジン本体の目的はほとんど変わっていません。自動車のエンジン本体の目的として、燃焼効率を上げること、排ガス成分をクリーンにすること、振動・騒音を抑制すること、そして小型軽量であることは、おそらく今の時代でも変わらず課題だと言えるからです。そして究極のエンジンが求めるのは、それらの相反する要素を、高める部分は最大限に伸ばし、削減部分は最小限に抑えることです。やはりそれは変わっていません。



ただ、エンジンだけを見ればそうかもしれませんが、電気モーターが動力源の時代が順番待ちをしています。地球残存化石燃料量が新たに見つかればその順番は後になる。今は使えない粗悪燃料の燃焼効率を飛躍的に向上する技術が発達すれば、またまた後回しになるかもしれない。エンジンの燃焼エネルギーの30%が有効仕事になっていますが残りは捨てられています。電気モーターは生成エネルギーのどれくらいが有効仕事として動力に使われているのでしょうか。冷却損失は遥かに少なそうだし排気損失はゼロとなるはずだから、50%以上はあるのではないでしょうか。エンジンは有限なものを燃やして違うものを生成する。モーターも必要な電気の供給源ではそうだとしても、生み出した速度や位置エネルギーをまた回生して走ります。自動車の燃料エンジンが駆逐され、モーター駆動が主役になる時代は何年後でしょうか。


これからがいよいよ、エンジンが生き残りをかけた面白い時代の到来です。私はもうすこし、エンジンカーにお世話になろうと思います。この本は10年前に先輩から頂いた本です。今までずっと本棚の済で眠っておりました。すいません。やっと読み終わりました。