「さかのぼり日本史」 をみて

最近録画した番組でNHKの「さかのぼり日本史」という番組について、今日は紹介と感想です。全部で4回放送されるこの番組は来週最終回となる。日本はなぜ戦争を続けたのか?というのがテーマ。東京大学大学院教授の加藤陽子先生が解説者として。


第1回。なぜ日本は敗戦が分かっていたのに戦争を続けたのかというテーマ。
第2回。何故アメリカと戦争を始めたのかというテーマ。
第3回。なぜ中国へ進出し長期化させたのか、がテーマ。
第4回。満州事変、大元帥天皇をがなぜ軍部の暴走を止められたなかったのか。
このように時代をさかのぼっていく番組です。


この番組はこれらのテーマに対する全て原因を、日本国内に向けている。特に戦争指導者とNHKが呼ぶ人々に対して原因を求めている。結論から言うと、私はこういう番組が歴史の矛盾を作り出す元凶だと思います。


加藤先生が書かれた「それでも、日本人は「戦争」を選んだ 」という本を読んだ時には、内に原因を求めている内容ではなかった気がします。番組の構成上、先生の意志に反して編集されてしまったか。それとも先生の思い通りの番組になっているのか。各テーマに対してこの番組が用意した答えを、私なりにまとめてみました。



第1回。無条件降伏を要求してきた連合国に対して、日本は、軍隊解除、戦争責任者の処罰を避ける為、そして少しでも有利な条件で交渉を進める為、決死の一撃を何としてでも欲しかったから長引いた。もう一つは満州の鉄鉱石・石炭の産出量がピークとなったから長引いた。長引いた為にサイパン陥落後の1年間で戦争犠牲者の9割が死んだとする。つまり、日本がもっと早く敗戦していれば犠牲者は1/10で済んだ。
第2回。日米共に開戦の20年前から中国の利権で衝突すると予測していた。つまり計画的だったとする。そして、太平洋戦争の指揮官達の多くが日露戦争を幼少の頃体験しており、戦争をエンターテイメント感覚で見ていた世代だった。天皇陛下も子供の頃戦争ごっこをされていた記録がある。戦争物資・物量の違いも短期決戦なら勝機有りとした。つまり、日露戦争から日本全体が戦争に傾倒し、中国大陸の利権を争って必然的にアメリカと衝突した。
第3回。中国との和平を断念した日本は武力行使を決断したが準備不足であり、途中で戦争の大義がコロコロ変わり、東アジア解放という大義を後付けした。中国人を侮蔑していた日本人は中国軍力も軽視していた。ドイツ式の戦術を学び、国共合作により予想以上に粘り強く徹底抗戦する中国に対して、戦争を終結させる手段を失っていった。つまり、東亜解放の大義名文としながら本当は利権を求め中国へ進出したが、舐めてかかった中国の予想以上の粘りに戦線が拡大した。


テレビって恐ろしいもんだと思います。学者が言うコメントと、元兵士のおじいちゃんが言うコメントの伝わり方が違ってくる。また、日本軍の映像と、死者の映像と、それらの組み合わせ方によって見る者に与える印象がをどうにでも変えていくことができる。それらの映像がどこの誰がいつ撮った映像かも見る方にはわからない。両軍が爆撃したというコメント中に日の丸の爆撃機が爆弾を落とす映像、破壊されていく町の様子を流せば、「両軍」という言葉はぱっと消えて、残るのは日の丸が爆撃で大勢殺したというイメージだけが残ってしまいます。まとめるとまだましですが、映像と合わせて見ると日本人として罪悪感を感じずにはいられなくなります。ただ、そう感じるのは私の先入観であるかもしれない。ただ、人も思いが入った映像というものは怖いと思う。


私の(私が正しいと思う)考えをまとめました。
第1回。サイパン陥落のタイミングでどれだけの人がきっぱり降伏と決断できただろうか。まして、大都市無差別絨毯爆撃、原子爆弾の実験台、そんな人の所業を超えたことをされるとは日本人の誰が予想できようか。そもそもそこには白色人種の黄色人種に対する動物と同レベルの扱いをするという差別意識があった。黄色人種が世界を征服しようとしているという黄禍論に白人は恐れていた。黒人やアジアの人々が日露戦争の白人を破った日本の勝利をどれだけ熱狂したか。一億総特攻という危険な考え方にまで日本を追い込んだのは人種差別だ。
第2回。日本が始めたのではなく、中国の利権を狙うすべての列強諸国によって誘導的にはじめさせられた。それにアメリカは中国に兵を送って既に日本軍と戦っていたし、石油輸出禁止などの制裁措置による。
第3回。わからない。蒋介石の自分たちだけでは日本は倒せないから沿岸部を占領されても時間を掛けて英米の参戦を待つ、そこまでの覚悟を日本は読み切れていなかったのではないか。東亜解放の大義はいきなり出てきたのではなく、第1次大戦後のベルサイユ会議の場で、人種平等を国際連盟の条文に入れるように人類初の提案をしたのは日本だったが、それをされると一番困るのは自由と平等の国アメリカだった。
第4回。ロシアのせい。第3者機関であるリットン調査団(どちらかといえば日本に不利な調査団)が満州事変について、ロシアの野望と侵略の経緯を記している。ロシアに対抗する為に中国と朝鮮と力を合わせる必要があってそれを日本は実践しようとしたが、どうしてもうまくいかなかった。


テレビってただ見てるだけで頭に入ってくると思っていたが、何回も巻き戻しながら必死で見ると、今まで私が知る歴史認識とかけ離れていることに気づいた。人それぞれが歴史認識を持っていていいと思うが、これは子供も見ているわけでどうにかせにゃならんと思います。当時、戦争を煽った新聞や、それに乗じた国民もいたにも関わらず、日本の戦争指導者を悪者にしたい魂胆が見え見えだと思う。歴史はすべてに因果関係があり、伝わるものは矛盾だらけで今もそれを繰り返している。このような番組こそが矛盾を作り出す元凶ではないだろうか。来週放送される内容も大体察しがつく。軍部が暴走したのは、日露戦争後に十分な報酬が得られなかったから軍部に不満が出た。こちらも漏れなく、戦争指導者の責任が全てとして報道するのだろう。その結果だけで終わってしまってはだめだと思う。もう一歩進んで、その裏で動いた世界情勢、人種差別の時代、国同士のいざこざを勇気を持って伝えるべし。そうでなければ子供たちに誤解を招く。


国際的にも認められた文献や資料に基づいて歴史を振り返れば、本当にこんな番組にはならないと思う。身近なことばかり順応しようとして大局的な歴史認識ができていないのではないだろうか。とにかく世界の考え方を遮断して国内向けにこういった番組を届けるのは日本の将来の為にいかんぞ。こんだけ言っても、私には何の覚悟もないわけで、歴史オタクですと言えばそれで逃げることができる。番組製作者の方が覚悟を決めておられると思いますので偉そうなことを言って申し訳ありません。ぼくちゃんも大局的に見て自分の仕事せんとあきません。