「誰が中流を殺すのか」  を読んで

アメリカの中流階級が殺され、アメリカが第三国に墜ちる日がくる。


情報、交通のインフラの遅れ、教育の衰退、犯罪の増加。失業者の増加。カード返済の滞り。住めなくなった家の増加。巨大化した金融業の不公平な冨の分配。メディアは真実を伝えず、軍事的に強国でも、経済は停滞、戦略的に破綻。


現状は酷いようだ。国土も人口の規模も大きい分、改善するにはより大きなパワーと忍耐が必要なのだろう。もともと、開拓民で、既存を破壊し、自分たちの都合のいい生活を構築していった民の末裔だから、それがもしDNAとして関係なかったとしても、あの広大な国土と大量生産、大量消費社会の中で生きれば、人と分け合う、限られたものを効率よく使う、できるだけ最小限に使う、などという発想や気持ちは出てきにくいだろうと思う。


アリアナ・ファヒントンさん 「ハフィントン・ポスト」の創始者。同ブログをAOLに売却し、現在はAOLハフィントンポストメディアグループ社長兼編集長。06年〜11年、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出された。アメリカが第三世界へ墜ちること食い止める手段は、国民の生活や発言に縛りをかけている特別な利益団体、いわゆるロビイストから政治を取り戻す必要があるという。


だが、現状に直面してもウォール街の改革は進まない。超富裕層だけが儲かるように法案が通る。技術が海外へ流出していき、第3次産業が盛んになり、産業が空洞化する。アメリカの多くの問題を解決する効果的な方法は民主主義だが、民主主義の機能が失われいて、企業の利益によって政策が支配されている。これをコーポラティズムという。彼らは、革新を求め、前へ前へ食いつぶして進むことが新しい考えだと称賛され、それをみんなが正しいと思い実践し、それが生きる力の源だと信じている。合理化だけが目的の革新は幸せではない。全く同じ道を進もうとしてはいないだろうか。日本に当てはめてもそっくりそのまま同じ問題を抱えている。


形ないものに感謝する、モノを大切に使う、食べ物を粗末にしない、という文化が、日本にいつの時代からあって、どの階級の人間まで持っていたかはわからないが(そういう専門知は民俗学なのだろうか。。。)、多くの日本人が今もそれを持っているはずだが、一人一人が持ちえていたとしても、トップが利権に動かされる社会構造であれば、一人ひとりが思いを持つ無意味さといったらない。日本人以上にアメリカ人がそれを持っているとも到底思えない。


アメリカが第三世界へ堕ちる日は必ずくる。盛者必衰。完全なものがないことをアメリカ人にしろ、日本人にしろ、世界が認識しなければならない。ロビイストはそれを悟っているから今を栄華しようとするのか、わからない。だが、ロビイストたちの目的がそれだとするとあまりに情けない。政治経済や社会学の専門知を持っているわけでもないが、社会は、利益ではない、道徳が正しいはずだ。正義ぶらなくても悪者ぶっても、正しいものは正しい。利益ではなく、道徳を重んじるという価値観を、企業も個人も国家も持たなければならない。


ロビイストの妨害を潜り抜け、アメリカが立ち直るには、中流階級に冨が分配される社会になる必要がある。ガバメント2.0、教育改革、インフラ大整備。中小企業と新ビジネスの支援、優秀な人材の輸入。ウォール街の改革(金融商品の規制、銀行業務と証券業務の分離、大銀行の解体)。


大切なのは、そういった改革の中にある、何を求めるかという価値観だと思う。便利さ、快適さだけを、求める生活を、アメリカから変えてほしい。目指すことが今までと同じであれば、一人一人はロビイストと変わらない。一台のポンコツを修正しながら大事に乗るアメリカ人であってほしい。特定の考えを持つ団体が政治へ口出すことを遠ざけ、経済や企業の欲望が遠ざけられ、より人民の人民による人民の為の政治を、あるべき民主主義の国を再建して復活してほしい。


アメリカ人が変われば、世界が変わるかもしれない。アメリカが変わらなければ、日本は変わらない。