「財政改革の衝撃 −待つも地獄、進むも地獄の日本経済−」 を読んで



新政権になり、増税の話題があがっているので、この本を読めたことはちょうどいいタイミングだったと思う。


各政党の消費税増税に関する政策は様々だ。甘利経済担当相は、4〜6月の経済指標が総合的に
上向きに転じれば消費税増税を決断するという。今日の記事では、増税条件は物価指標2%向上。2014年5月に8%、2015年10月に10%にひきあげる。順序としては、政府の本気を市場に示す→企業の投資が増える→デフレ改善→物価上昇→増税、と言う流れと私は理解した。


だがこの本を読めば、確かに一時的には景気は上向きになるかもしれないが、それは一時しのぎであって根本の解決にはなっていない、ということがわかる。日本には現在700兆円の借金がある。個人では借金を返さなければ南港に沈むと相場は決まっている。企業が借金を返さなければ、倒産して多くの従業員が路頭に迷う。だが国は、借金をいくらでも作り出すことができてしまっている。元は1年限りの特例だったのを、毎年毎年特例として国債を発行する。だが、日本の公債残高は700兆円を超えている(平成24年度末)。私は日本の国債はほぼ日本人が買っているから問題ないと聞いたことがあったので、上手くまわっているのかと思っていた。だがそれは間違いであることがわかった。


国の収入は、税収、税収外を合わせて、40兆円。うち、地方へ10兆円が決まっているので、国家の財政は30兆円。支出は、一般歳出53兆円。地方7兆円。国債金利支払い10兆円。合計70兆円。足りない40兆円を国債でまかなっている。毎年毎年40兆円繰り返し、700兆円になった。このあと10年間、繰り返せば、1000兆円を超える。この借金は将来の日本人に背負わすことになるのは誰の目にも明らか。そして、この借金が自然消滅することは100%ありえない。と思う。


この本ではこう書かれている。本気で赤字をチャラにしてやり直そうとした場合、消費税は56%、必要となる。当然消費は落ち込み、景気は悪化する。GDPは現在の1/3となり、国民は過酷な生活を強いられる。このまま先送りした場合、前述の通り、1000兆円を超える。だましだましやったとして10年はもつ。そのあと最悪の地獄が待っている。デフレが終わった時点で、金利が上がっていき、国債金利支払いが追いつかなくなり、南欧の国と同じ悲惨な運命をたどることになる。


維新の会は増税分を地方にまわす政策だったが、この本では優先度は、国家>地方としている。維新の会は地方が独立することを考えているのかもしれないが、少なくとも借りたもんは返さなければ沈められると思う。もうなくなったが減税日本の減税についても、どうやって借金を返そうと考えていたのか、いろいろな意見がある中で今後見ていかなければならないと思っている。


増税1%につき、2.5兆の税収UPが見込めるとされている。もし再来年、10%に消費税がUPしたら、12.5兆円の増収になる。だが、赤字は減らすには中途半端だ。結局、現政権がやろうとしていることは、赤字の増える傾きを緩やかにするだけで、27.5兆円は毎年増える続けることになる。一時しのぎに変わりない。


メディアは、国民の味方を自負しているので、この借金について、政府に責任を押し付ける。まるでこれは、これまでの政権が行ってきた悪事かのように。だが利益を享受したのは誰か。この国の借金は国民が背負うものだ。もはや、メディアは商業主義の塊となって儲けのことしか考えてないことが判明している。どこの新聞(地元の新聞しか知らんけど聞くところによると)もうわべだけの、国民の見方をして、責任を持って記事をかいていないようだ。というのは優秀な記者さんに申し訳ないので、少なくとも100%頼ることが無駄なことはわかっている。現に、この問題に対しても、国防に関しても、あらゆる問題に対して、正義の顔をする傾向にあると思っている。


政権が自民党に代わり、安倍首相になった。増税に対して、目先のことしか考えない、メディア、野党の反対、与党内でも保身しか考えない者は反対する。もちろん何も知らない知ろうとしない私たち国民も、大部分反対する。安倍首相が、どう国民を説得し、覚悟を決めさせるのか。あらゆる団体とつながっている自民公明政権が、どこまでつながりを断ち切って、全体を考えた政策を実行できるのか。この本に書かれている過酷な生活をしなくても、経済成長を上手く利用して赤字が消す方法があるのか。この本しか読んでいないので、もう少し他の方の経済の考え方を読んでみる必要もあると思う。


もし財政改革の覚悟が日本人になければ、日本という伝統文化も高度な生産技術も全て流出し、残るのは利己的な考えを持つ人間ばかりが住まう国になる、という恐ろしい、だが現実に目の前にその決断が迫っていることを教えてくれる本でした。財政改革の決断と覚悟は、政権のみに任された課題ではない。我々、国民全員に課せられたものだ。


感想文というより、本の内容をそのまま書いただけになりました。


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