「インテリジェンス人間論」 を読んで


著者 佐藤優さんは元外務省の官僚。


雑誌なんかで何度か評論を読んだことがあるが、その文章は難しくて理解できなかった。そのころに比べて、今回読んだこの本は分かり易かった。小説のように読めた。


当時の外交官時代の諜報活動を描いている。ソ連外交官との折衝・情報収集。北方領土に関する対露外交での小渕元首相、森元首相、鈴木議員らとのやりとり。あっち付きこっち付きの個人の将来しか考えていない一部の政治家たちとのやりとり風景。本で書けないトップシークレットもあるんやろうけどおもしろかった。国対国の外交関係も、人対人との微妙な駆け引きや、信頼関係で成り立ってるってことに驚いた。警察官やヤクザやら、そんなゴタゴタ国内のちっさいもんに見えてくる。


いまだ、著者の逮捕された理由が正当なものなのか不当なもんなのか、私にはわからない。政治家には、脱税容疑やら、収賄容疑やら、スキャンダルやらで陥れられることが多いが、著者が関わった事柄が、そういった犯罪にあたるのかどうか分からない。だが、真剣に、国防を考えて、外交手腕を発揮してきた優秀な外交官や政治家が干されて、あっち付きこっち付きの外交官や政治家が、のうのうと生き残る社会の仕組みがある。


派閥やら政党やら多数派からは阻害されようと、自分自身の益を失おうとも、国益、公の益を第一優先に考えて仕事をする政治家こそ、真の政治家なんだろう。その一番の目的を見失わなければ、少々の戦略ミスやらスキャンダルやら目をつぶってもいいと思う。外交手法は、色んな考え方やアプローチがあって、正解はないと思う。外交では負けてはならないが負ける時もある。


著者が磨いてきたようなインテリジェンスを駆使し、目的達成の成功率を上げる為の切磋琢磨は必要だが、足の引っ張り合いは不要だ。テレビやニュースを見ていても、そのぶつかりが前者なのか、後者なのか、わからなくなることがよくある。人と話していて、なんかズレたことを言ってしまうのは私の得意技。それはさておき、ニュースやら、国会やらで、目的を逸脱した足の引っ張り合いを演じられると、時間の無駄やし、なにせ頭が混乱するからやめてほしい。


目的を忘れて権力や自己保身の為に、他を考えないひと。原発の安全を証明できないまま稼働推進する人。いじめがあったのにそれを認めない人。オスプレイを配備することを目的にする人。権力保持を最終目的にする人。。


権力は信念をもった政治家に必要だ。だが、信念をもった政治家が誰なのかは、関わっている当事者でなければわからない。桐の箪笥の価値なんて、作った本人でなくては分からない。BMWの走りがいいか、なんて作った本人じゃないと本当のことは分からない。芦屋のあばちゃんならわかるかも。当事者である著者の本をこれから読んでいこうと思う。著者が努力し目指してきた目的を私は正しいと思えるから、自分も当事者の意識を持って外交を理解していこうと思う。