「国力とは何か」 を読んで



前半部をまとめる。

グローバルインバランス。どこかで、この悪循環を断ち切らなければいけないが、他国を見る前に自国の問題を解決しなければならない。経済政策は国民のイデオロギーや価値観によってどうとでも捉える方が変わると思う。何がグローバルなのか。グローバルっていいものなのか。何がナショナリズムなのか。ナショナリズムって危険なものなのか。何が右で何が左なのか。本書では経済ナショナリズムの必要性を説く。経済学だけでなく社会学の勉強にもなる。と勝手に思っている。

未曽有の災害、他国の脅威に対しては、国家権力の発動が不可欠。経済の危機に対しても、国家権力の発動が必要。

世論・経済界・マスコミは、経済政策における国家権力の必要性に価値を置かない。自由主義経済活動こそが理想の世界経済を生み出す思想がが世界観でもある。が実際は経済ナショナリズムで動いている。

グローバル化の時代には企業の利益と国民の利益は一致しない。国家が行うグローバル化に適応する為の構造改革は、国民の利益より企業や投資家の利益を優先する政策となる。デフレ下では給料が上がらない。グローバル企業にとっては利益となる。そのままデフレが続き、需要不足と供給不足で倒産・失業者増える。企業は需要を求め海外へ進出し外需拡大するため、さらにグローバル化しデフレが促進する為悪循環となる。社会に閉塞感が出ると、排外的・攻撃的なナショナリズムを発動させる要因が増え、社会秩序・治安の悪化も招き、全体主義の起源ともなる。

グローバルインバランスを是正することが、世界経済の立て直しに急務であり、財政出動と金融規制緩和が必要となる。だが、対応する国家の能力は、ウォール街に政治を握られるアメリカ、ドイツだけ黒字で連帯感のないEUは限界。中国ロシアなどの新興国は、国民の統合レベルが低い(一部の民族や階級が窃取する)ので国家主導の財政出動はできない。民主化運動や民族間紛争に繋がれば中国やロシアは内部から分裂。日本はそういう面を逆手に取って外交を進めていくべきかと思うが、企業利益優先社会だとそれは難しい。


ナショナリズムが間違った方向に向かうと、国家権力が暴走する危険もある。1930年代。日独伊の全体主義の台頭。最近ではアメリカの報復の為のイラクへ侵略。経済では、戦略物資(資源や食糧)の輸出制限などどによる、中国の近隣窮乏化政策や資源ナショナリズムに結びつく。国際関係を緊迫させる原因となる。


そういった危険も踏まえ、経済における国家の役割を考える。アメリカは国家の意思を持って情報技術や金融技術の優位を利用して活性化をすすめた。日本の高度経済成長も、経済ナショナリズムの元で行われた。今は自由主義だから、国家の意思は必要ないと考えている、もしくはそう思わされているのは日本だけのようだ。国民国家である限り経済政策はナショナリズムによって動いている。


ナショナリズムという言葉。まずはネイション(国民)とステイト(国家)の意味。ステイトは、法的。政治的な組織。支配または権威によって人民を統合する力。ステイトに対する忠誠心や感情はナショナリズムというよりステイシズムと言える。ネイションとは、歴史的、文化、神話、大衆、経済、ルールを共有する特定の人々。そのネイションに対する忠誠心や感情がナショナリズム。こう持ってこう叩くはバカリズム


経済ナショナリズムは単に保護主義をとるのではない。国民の能力を最大限に育て活用し、将来にわたって安心と秩序を約束する国家の使命を果たすべく、時には自由主義、時に保護主義を用いる。一部の個人や企業の目先利益を追求するステイトではなく、ネイション、ネイション全体に、税金や、法律の理解があり、社会保障や安全な暮らしを実現できるステイトが実行する経済の考えである。そういう意味で、現在の日本の経済は、ナショナリズムなき自由主義思想の下で動いている。


続きは後半。