「デンソー」 を読んで


デンソー。初めて社名を知ったのは、GTカーのスープラにDENSOというスポンサーが付いていたのを見た頃だろうか。ドリ天とか見ていたころだろうか。今では、よく知っている社名だ。でもデンソーの何がすごいのか知らない。世界有数のシステムサプライヤーとなっている理由はなんなのか、少しでも役立つのではと思い買ってみた。’04年発行の中古本なのに、850円。



戦後まもなく豊田自動車工業から分離独立。ドイツのBOSHと技術提携。高度成長時代。企業が自国内の市場を見て、変動相場制になる前からいち早く世界を見据えた戦略をたてていた。自動車のエレクトロニクス化を、役所や電機業界へいち早く訴え、半導体開発に着手したのは、市場動向と経済情勢を判断できた経営判断のセンス。自社の製品のコアとなる部品は自社開発するというスタンスを貫く。10年でBOSHと肩を並べるという目標を持つ。常にユーザー目線で商品を作り続けてきた。家電メーカーが3種の神器を創る時代に、デンソー製洗濯機はドラム式で発売していた。今では当たり前の電気自動車を何十台か作り始めた。当時夏は窓を開けて走るのが当たり前の時代に、自動車用エアコンを開発、大絶賛。1987年。イグニッションコイル量産技術の導入で、BOSHから逆技術提携を受ける。育ての親への恩返しをした。2003年。ディーゼルのコモンレール開発でBOSHを超えた。「デンソー開発の噴射装置だとディーゼル車からは黒煙は出ませんよ」と石原都知事に言える。ディーゼル開発では対フランス、ドイツに橋頭保をきづいている。独立企業としてトヨタ自動車以外に受け入れてもらえる様、広く市場から認めてもらう製品を作ること。それがトヨタグループの一員としてなすべきこと、と9代目社長の深谷さんは言われる。


BOSHとライバル社同士と思っていたので過去技術提携してたのも驚きだったし、恩返しとか悪く言うと古臭い感覚、コモンレールでは師を超えたと言わんばかりの結果。「三河人は勤勉、律儀、物事に真正面から取組、真面目に働く」という風土らしいが、確かにぴったりだと思った。これは一昔前に欧米人から言われていた「日本人は勤勉で、、、」というのと同じだな。トヨタグループとしての恩返しを考えいることに当たり前なのかもしれないが、大企業なのに律儀な会社なんだなぁと感心してしまった。重箱の隅をつっつく様なせこい考えではないな。



トヨタよりも先に海外進出するという経営の力。技能を高く維持するために、モチベーションを高く保ち、気軽に参加できる技能競技会を開催、部活動のように取り組んだ。そして技能オリンピックへの参加。金メダルになるという目標。同じ目標へのベクトル合わせ。「技術の力」そんな企業を支えるのは、人。人こそ経営資源であり財産。人は変わる。成長もするし衰えもすr。進歩もするし退歩もする。メンツや建前、会社都合で動くのではなく、経営最前線の現場に立って陣頭指揮を取る経営者、管理職が必要。「人の力」



部活動のように仕事したい。勝ちたいとか優勝したいとか、そのためにはどうすればいいか、とか、純粋にそういうことを自分の仕事と成果に置き換えて考えることができれば、魅力を持つことができれば、個人的にもやりがいがでるだろうし、メンバー全員と価値観を共有できれば素晴らしい製品やアイデアで出るんだろうと思う。



最後は著者の感想になる。「今こそモノづくり日本を再び」グローバル化の波に乗って、その場しのぎで生産拠点を海外へ移転するだけでは国内産業にもたらすのは負の遺産。単に短期的に為替相場の差異だけで、人件費安さ目当てに進出し、人を育てるコストと2,3年でやめていくコスト。トータル原価計算すればさほどの利点はないという。コアな技術を残し臨機応変に対応すべき。軍事産業でも、航空産業でも情報産業でも、すでに国家規模で投資をしているアメリカに後塵を拝している。今後の無尽蔵の人的資源、鉱工業資源を有する中国が追いついてくる。(今は追い抜いた)。中国からしてみれば日本の空洞化と国力の衰退の望んでいる。今まで得意とした分野で、技術や技能を生かしモノづくりの集積効果を期待していかなければならない。それは企業戦略ではなく国家戦略。良さを求めるのではなく、善さを求める。みんなで考えて真面目に考えるデンソーの姿勢に学ぶべきところがあり、それが工業国ニッポンを立て直すことにつながる、と。



産業空洞化は避けたい。そして20年後の日本を考えると、やみくもの海外移転も避けたい。グローバル企業は国家利益にはならないのは何かの本でみた。デンソーのように、恩を恩で返してくれる国や企業をしっかり認識して(そうでないお国は注意して)、守るべきもの、残すべきもの、伝えるべきものを大切にしてはぐくむ。何もかも曝け出しちゃう前に、私も技術者の端くれとして三河人に負けぬように頑張らねばなるめーな!